インバウンドブログをリニューアル。題して「北関東のインバウンドを10倍にしよう!」!毎週月曜夕方更新でお届けいたします。今回はなぜこのコロナ禍においてインバウンドブログを再開することにしたのか、社長の宮地アンガスとスタッフ山内が対談しました。
北関東圏インバウンド提言:その2「二次交通の課題の解消にレンタカーを活用しよう」
『北関東圏インバウンド「ステップアップへ10の提言』を新年に提案させていただきました。
そこで、今号は「北関東の二次交通の課題の解消にレンタカーを活用する」のテーマに踏み込みます。
北関東圏(栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県)の観光問題となっている二次交通問題とはなにか? なぜレンタカーが有益なのか? レンタカーの隠れたメリットなど、一緒に考えてみましょう。
北関東圏の二次交通の課題
観光の会合では、よく「二次交通の課題」というフレーズを聞くことがあります。
自宅から観光地までの移動に利用する交通機関を一次交通と呼ぶのに対し、観光地内の移動に利用する交通機関を二次交通と呼ぶそうです。外国人観光客の場合には、主にローカル線や路線バス、タクシーが、観光地での二次交通となり、これらのインフラが整っていないと観光客は長く滞在することができません。
また、二次交通は観光だけでなく、その地で生活している住民の移動手段ですので、人口の減少に伴い利用客が減少すると、廃線・廃止、本数の減少にいたってしまうこともあります。
そして、二次交通が不便な地域ほど、買い物や病院、通勤、通学など、場所を移動する手段として、車の保有率が上がり、二次交通がますます発達しにくくなります。
人口100人当たりに対する車の保有率は、1位:群馬県、2位:茨城県、3位:栃木県と、北関東の3圏が保有率トップ3を占めています。埼玉県は42位ですが、東京都のベッドタウンである県東南に中核都市や政令指定都市があるため、二次交通が発達していない地域では、他の3県と同様に車の保有率が非常に高いのではないかと考えられます。
北関東圏は、車の保有率が高く、二次交通網が低い地域なのです。
そして、二次交通網が低いということは、「外国人観光客の滞在にも直結する」ということです。
つまり二次交通網が低いことは、外国人観光客の周遊行動に制限ができ、滞在時間を減らすこととなりますので、その地での消費活動が伸びない原因をつくってしまうのです。
電車、バス、タクシーの長所と短所
前述しましたように、北関東圏で外国人観光客に活用されている主な交通手段は、鉄道、路線バス、タクシーです。
電車は正確、ただし駅からが問題
北関東圏内にはJRや私鉄のローカル線が各地を走っています。
日本の鉄道の時間の正確さは世界屈指、要所間の移動には便利で安心です。インターネットで情報も入手しやすく、路線図や案内も主要な所では多言語化が出来ています。
しかし、本数が少なかったり、乗り換え時間が長かったり、降りてからの手段に困ることがあります。また、主要な鉄道は南から北へ放射状に伸びているため、東西の移動も容易ではありません。
路線バスは奥地に行けるが情報が少ない
鉄道網を補完する形で、多くの路線バスが運行されています。
主要な観光地へは路線バスの他、シャトルバスが運行されており、乗車場所さえわかれば目的地へ行くのに便利です。ただし、一部の観光地以外は外国人向けの情報が少なく、路線図を見ても乗り換えや降車駅が分からない事がよくあります。
また、一日に数本のバスしかないところも多く、日本を旅慣れた方でないと不安を覚えることが多々あります。
タクシーは自由に周遊できるがコストも高い
タクシーは主要駅で拾うことができますし、その他の地域では迎車を頼むことができます。
また、電車やバスに比べて、自由にどこにでもいけますし、駅やバス停がないため、乗車場所から目的地へ的確に行く手段としては最適です。ハイヤーで好きな場所を周遊することもできます。
しかし、一番の難点は費用が高くなることですので、長距離の移動は敬遠されがちです。
二次交通の課題解消にレンタカーが重要な理由
インフラを整備するには時間と費用がかかります。たしかに、各県や自治体では、観光地へのシャトルバスや周遊バスを増やそうという動きが目立ちます。しかし、その事業は主要な箇所だけにとどまり、全域の二次交通課題の解消には至っていません。このような事業も大切ですが、今あるものを最大限に活用することで、費用をかけずに二次交通の問題を軽減することができるのではないでしょうか。
それがレンタカーなのです。
多くの駅にはレンタカーが借りられる店舗が揃っています。
既にあるこのサービスを外国人向けに売り出すことで、バス停を立てたり、認可をとったりせずに二次交通課題が解消されると考えます。
カーナビも英語や数か国語対応のものが設置された車も増えましたし、自分のスマホに入っているGoogle Mapを使えば、カーナビ代わりになります。レンタカーであれば、行きたい場所へスムーズに向かうことが出来ますし、これまで交通網が無くて行けなかった場所にも行くことが出来るようになります。
駅や宿でレンタカーを借りて、1-2日間ドライブを楽しむ方法もありますし、成田空港や茨城空港からレンタカーを借りて、数百キロと北関東を周遊することもできます。自由な旅行をしたい、長距離運転を楽しみたいという、ロードトリップ(Road Trip)を求める新たな外国人観光客層を取り込むことも可能になるのです。英語で地元の名物やB級グルメなどを扱うお店、民芸品などが買えるる店を紹介したロードマップがあったら、楽しいドライブになると思いませんか?
また、東京ではレンタカーはお勧めできませんが、北関東圏では、日本で自然に囲まれた道路をドライブするという、「東京でできない体験」が提供できます。レンタカーは、東京の宿泊客を北関東圏に呼ぶきっかけにもなります。ふと目にした田園風景や田舎景色など、新たな旅の楽しみになるでしょう。
レンタカーには、他の二次交通にないメリットもあります。
レンタカーで周遊すると、荷物が重いという心配がなくなります。何気なく通りすがりのお店に気軽に立ち寄り、気に入ったものがあれば購入できます。また、時刻表を気にしなくて良いので、時間が限られ1カ所しか行けない観光名所も、車なら数カ所巡ることができます。
滞在時間が長くなることで、その地域での平均宿泊日数も増え、その地域での消費が増えるのです。
レンタカーの活用は、滞在時間を延ばし、外貨を落とす経済活動に繋がるのです。
北海道での興味深いデータがあります。レンタカーでドライブ観光した外国人は、当初の期待より満足度が高く、「また来たい」という再訪問の意向が9割に上るそうです。また、ドライブ観光客は乗車1人あたりの平均の宿泊代とレンタカー代除く消費額(観光地での入場料や昼食代、お土産代、ガソリン代等)が一日当たり約6,300円になったそうです。(データ引用:http://www.hkk.or.jp/kouhou/file/no525_report2.pdf)
自由に立ち寄りが可能なレンタカーでの移動は、消費を生む旅のスタイルだと言えるでしょう。
レンタカーの活用で成功しているインバウンド事例
北海道では官民が連携して情報共有し、外国人観光客へのレンタカー利用を促進し、エリア毎のデータを分析しています。
平成27年度では、北海道における外国人観光客のレンタカー利用者は41,361件と、沖縄県に次いで第2位となりました。(データ引用:訪日ドライブ旅行の現状と課題(JNTO) )
また、道内における広域観光が促進され、移動が難しかった道内での広域移動が可能となった他、滞在時間が長くなり、予定していなかった観光地や温泉、レストランに立ち寄る結果があったようです。(データ引用:http://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/bunyabetsu/kankou/doukooutyousa/houkokusyo26-04.pdf http://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/renkei/splaat0000017w61-att/splaat0000018683.pdf )
さらに、外国人向けの高速道路サービス「Hokkaido Expressway Pass」や、安全な運転への啓蒙課題を共有する仕組みを構築したことで、北海道は現在、外国人ドライブ観光客の人気スポットになっています。
また、日経新聞の記事によりますと、九州でも外国人によるレンタカー利用が伸びており、運輸局と九州観光推進機構が連携して、レンタカー利用の促進に力を入れています。公共交通機関が整備されていない農山漁村などにも恩恵が出ると期待されているようです。
「Japan Expressway Pass」をフルに活用しよう!
訪日客向け国内の電車の乗り放題チケットというと「Japan Rail Pass」が世界的にも知られていますが、「高速道路乗り放題のパス」もあることはあまり知られていません。
外国人観光客によるレンタカー利用が高まったことで、2017年10月に外国人観光客専用の「Japan Expressway Pass(JEP)(日本語サイト)」ができたのです。
「Japan Expressway Pass(JEP)」はNEXCO各社と宮城県、京都府、兵庫県の道路公社各社が連携した日本最大の訪日客向け高速道路乗り放題パスです。連続7日間で20,000円、連続14日間使用で34,000円、いくら走っても定額ですからかなりお得です。レンタカーを借りる際に専用ETCカードを受け取ることで使えるようになるようです。
北関東には東北自動車道、関越自動車道を始め、いくつもの高速道路が通っており、訪日客は「JEP」を使えば料金を気にせず周遊を楽しむことが可能になったのです。
「JEP」は、成田空港からのアクセスも範囲内になるので、「JEP」を利用した北関東周遊を海外にアピールすれば、北関東への外国人ドライブ観光客の取り込みに一役買うことが出来るでしょう。
まとめ
外国人でも、国際運転免許証をもっていたり、外国の免許証に日本語の翻訳をつければ、日本を自由に運転できる国が約60カ国もあります。これは大きなチャンスです。
日本人の感覚としては、自国から見て道路の逆側ので運転することに怖さを感じるかもしれません。しかし日本人に比べ、アジアや欧米の旅行者は、他国での運転になれていることが多く、車で国をまたいで移動することは良くあることです。また、タイ、シンガポール、香港、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、インドのように日本と同じ左側通行の国もあります。
同時に課題もあります。日本で安全に運転をしてもらうためには、法規や交通ルールを理解してもらうことが最も重要です。運転手は飲酒ができないこともしっかり理解して貰う必要があるでしょう。
交通ルールの啓蒙やロードマップ、ガイド等の多言語化を進める必要はありますが、二次交通の課題を解消するために、北関東の観光地におけるレンタカーの利用を推進し、外国人旅行者に宣伝すべきです。
繰り返しになりますが、北関東圏でのレンタカーの活用を推進すれば、外国人観光客の宿泊日数を増やしたり、訪れる場所の複数化が望め、北関東圏で消費する金額も増えます。
今あるレンタカーというインフラを存分に活用することで、二次交通に対する課題解消を目指すことは、北関東圏とって急務なのです。
今後のブログでは、他の提言につきましてもそれぞれ詳しくご紹介する予定です。他の提言にご興味がある方は『北関東圏インバウンド「ステップアップへ10の提言』をぜひ読んでみてください。
ブログ作成者:宮地アンガス
ジャパン・ワールド・リンク株式会社 代表。栃木県の田舎町育ち。現在英国・ロンドンを拠点として「世界から北関東へ。北関東から世界へ。」をモットーに、日本・北関東圏のインバウンド及び海外進出を支援中。
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