外国人に英語のプレゼンテーションをする際、自己紹介や本題に入る前に、その場の緊張を取り除いたり、聴衆との距離を縮めることが大切です。そこで今回は、マイクを渡され、聴衆の前に立った時、場の雰囲気が固くならないように、シーンに合わせた簡単な「導入フレーズ」をお伝えします。どうぞお役立てください。
海外取引を増やしたい企業がCSR(企業の社会的責任)に真剣に取り組むべき理由
CSR (企業の社会的責任)という言葉をご存知ですか?
最近、日本でも話題になっている言葉ですが、海外では企業の社会的責任 (以下、CSR) に対する意識が高く、海外展開をされる際には日本以上に配慮が必要です。
そこで、今回のブログでは、CSR/サステナビリティの専門家である、サスティナビジョン代表取締役の下田屋毅氏に弊社代表・宮地が「日本企業の世界進出とCSR」というテーマでインタビューを行いました。
下田屋氏は日本とヨーロッパを行き来しながら、日本企業にCSR/サステナビリティついて教育したり、国際会議に参加されたりしながら、グローバル企業や最先端のCSR/サステナビリティのトレンドを調査されるなど精力的にご活躍されています。また、定期的に東洋経済オンラインやオルタナなど各紙でコラムを連載されております。
1. 企業の社会的責任
宮地:企業が地球に与えているネガティブな影響と聞くと真っ先に「自然破壊や地球温暖化」が思い浮かびます。企業のCSR活動は、自然破壊を減らすとか、CO2削減とかでしょうか?
下田屋:環境破壊もそうですし、人々に与える影響もそうです。もっと広い意味で地球全体に影響を与えているともいえます。プラスティック製品だったら石油のように何かしら自然由来の原料を使い企業は利益をあげる、言い方を変えれば、自然からの搾取によって利益の追求のみを行い企業活動を行ってきたといえるでしょう。もちろん従業員に給料を支払うなどして、従業員に貢献していると言えますが、地球全体の大きな仕組みの中ではマイナスの影響を与えてきているようです。
本来なら、大きな枠組みの中で自然と企業は共存すべきところが、現代では共存ではなく企業の搾取であるといえます。
宮地:昔の近江商人の三方よしの「売り手よし、買い手よし、世間よし」の世間よしのようなものが大切なのでしょうか?
下田屋:そうですね。世間よしの部分に社会、環境が含まれていますが、バランスが大切だと思います。
宮地:近江商人の言い伝えを考えるとと、日本はCSR先進国であってもいい感じがするのですが、日本のCSRの現状はどうですか?
下田屋:一番のポイントはCSRを企業の中でどのように認識しているかでしょう。もともと日本では近江商人の「三方よし」、や松下幸之助の「企業は社会の公器」という言葉にみられるように、企業は社会課題を解決するものとして誕生してきたのですが、企業規模が大きくなっていくにつれ、そのような観点から離れてしまっているように思います。
宮地:なるほど。それでは、グローバル企業について質問です。取引先が国内のみの企業と、海外に進出している企業、またはこれから進出を考えている企業では、CSRに対する考え方は違いますか?
下田屋:グローバルな企業であればあるほどCSRに対する認識は高いです。CSR部門を持ち、CSR報告書も出しています。それでは国内企業がCSRをやらないくていいのか、となるとそうではありません。大企業は周囲に与える影響も大きいのでカバーする範囲、配慮しなければいけない部分が大きいのです。しかし中小企業も影響は与えているのです。
もし全ての中小企業が自社の利益のみを追求し、環境・社会に配慮しなければ、全体の割合から考えると最終的に大企業より大きなマイナスの影響を与えている可能性もあります。現在は大企業が、サプライチェーンに位置する中小企業の責任も負うことになっています。
つまり、日本の中小企業で、海外ブランドのサプライチェーン上にある企業であれば、日本の大企業のみならず海外ブランド側の働きかけによっても、実施しせざるを得なくなってきている現状があるのです。
宮地:海外と取引するために、海外のクライアントからの要求や条件をクリアする必要がある、例えば認証をとらなくてはいけないなどですか?
下田屋:そうです。私が関わっている某産業では下請けのサプライヤーである中小企業の工場に対しては、行動規範に沿った労働環境を整える必要があり、それを満たす努力をしないと取引の継続を見直す姿勢を取っています。例えば2013年に、バングラディッシュでビルが崩壊する事故がありましたが、建築基準が甘かったうえ、強制労働が行われていたことも発覚しています。
このようなサプライヤーの労働者環境をも管理することが最終製品を販売しているブランドの責任となっており、 この事故でもブランドの責任が非常に強く追及されました。 このようにサプライチェーン上で何か問題が発生したら、そのブランドに大きなダメージを与えるのです。
つまり、中小企業でも、ブランドのサプライヤーである以上は責任を負って改善しなくては、仕事が継続できないという状況が既にあるということです。
2. 市民社会の監視の目
宮地:CSRという観点からみると、企業、ブランドに対する一般消費者の目線は海外の方が日本より厳しいといえますか?
下田屋:そうですね。海外では消費者はもちろんNGOも市民の代弁者として企業に対しプレッシャーをかけています。海外はNGOに対する信頼度が政府、企業、メディアに対してより高いので、影響力を持っています。しかし、日本はNGOへの信頼度が極端に低く、逆に企業の信頼度が高いため、企業は不祥事をおこしたとしても、一般的にはよほどのことがない限り、企業はちゃんとやってくれるだろうという目で見ていると思います。
海外では市民社会の監視の目が機能しており、企業が何をしているのかを知ろうとしている点が日本との大きな違いだと思います。この点が情報開示や透明性が海外でより求められている理由でもあります。
3. 安いものにはリスクがある
宮地:CSR活動を重視するとコストが増え、その分製品の値段に上乗せされるので、海外との価格競争の負けてしまうと心配する企業も多いのではないでしょうか。この点に関して海外の企業はどのように考えているのでしょうか。
下田屋:今までは特に調達に関しては、より安いものを購入することが追求されてきました。これまでは問題なかったとされていたのかもしれませんが、見過ごされていた要素があったのだと思います。安いものはリスクを伴います。安く調達し販売できれば競争力は増すかもしれません。しかし例えば紙を作るためにパルプや木材を購入する場合、安かった利益が出たと喜んでいても、その木材が原生林を違法伐採したものであった場合、二酸化炭素の吸収源である原生林の破壊、地球温暖化という悪影響を与えていることになります。
また原生林が破壊されれば、生態系も破壊され、生活する人々にも影響を与えることになり、問題は自然環境から人権問題までひろがります。原材料の購入時に、安いからいいではなく、安いにはリスクがある、ということを考えていないと、問題が発覚したときに企業はその対応と信用回復に多額の費用が必要となります。
安い材料で生産し商品を販売するという一時的な競争には勝つかも知れませんが、長期的な視点で見たら先ほどお話したリスクが顕在化し、企業は多額の補償金を支払うことやブランド価値が下がるなど結果的に負けに繋がることもあるわけです。そのため多少価格が上乗せされても、認証をうけていたり、トレーサビリティの確認がとれたものを販売することが今のビジネスでは必要不可欠となっているのです。
売り手も値段が少し上乗せされているのは必要なことだと、消費者にも伝えていかなければ、現在の状況は改善されないでしょう。
宮地:日本のメディアは、今日は丑の日で、どこどこでうなぎが半額ですなど、安売りしているところをニュースに取り上げる印象がしますよね。商品の質にこだわったり認証をうけて一生懸命やっている企業よりも、お客様還元セールをやっているところの方が注目を浴びている感じがします。
日本は安くて良いものを目指して高度成長してきたため、「安いことは良いこと」だという感覚があっても、「安いもはリスク」という意識はあまりないように思いますが、どうでしょう?
下田屋:うなぎの話だと、絶滅危惧種といわれつつ丑の日に大量に販売されていますよね。英国のスーパーでは、絶滅危惧種の魚は食べないようにしましょう、似たような感じのこちらの魚を食べましょうなどというキャンペーンを消費者へ向けて行っています。また持続化可能性に重きを置いていて、スーパーではMSCと言われる持続可能な方法での漁獲を行った認証品がほぼ半数以上を占めています。
例えば日本の食文化であるクロマグロに関して言えば、絶滅することが危惧されている魚になります。日本の食文化であり他国にとやかく言われたくないと主張します。しかし、絶滅しそうなものは、量が比較的多いとされている代替品に切り替えていくことをしなくては、次の世代に残すことができない状況となってしまうのです。
店頭に並んでいれば消費者は購入しますので、企業側から消費者に働きかけて社会を変えていく必要があるのです。
宮地:特に海外に進出する場合には要注意ですね。
下田屋:そうですね。また今の経営では調達しようとしているものが、きちんと調達できるということが前提となっていると思います。しかし現在70億人の地球人口が2050年には90-100億人へと増加していく中で、資源の取り合いが起きると言われています。
欧州の先進企業は今後へ向けて持続可能な認証をうけているものなどを優先的に確保することができる仕組みを作っています。環境や人間社会への配慮を行わないと企業自体も持続可能ではないという前提のもとに欧米の先進企業は動いており、それをビジネスの中で実施することを考えています。日本の中でもその前提がないと、やはり企業は継続できなくなります。
4. 日本企業のCSR評価
宮地:海外に進出している日本の企業でCSRの評価が高い例はありますか?
下田屋:日本企業の環境面、特にリサイクルの仕組みは評価され、認識されていると思います。富士ゼロックスさんのリサイクルのしくみや同じ業界のキヤノンさんやリコーさんも環境面でのリサイクルの仕組みを持っていて、評価が高いと思います。ただCSRは環境だけではありません。社会面、特に人権への配慮や取り組みも必要ですが、日本企業で積極的に取り組みをしてきているのは日立製作所さんです。日立製作所は欧州のビジネスのイニシアティブに参加し、リーダーとしてサプライチェーンと人権を推進するなど、 国連ビジネスと人権に関する指導原則というガイドラインに則った人権への取り組みを進められています。
欧州では、ユニリーバ、マーク&スペンサー、ネスレなどがトップグループとして環境・人権への配慮を進めていますが、 これらの企業は、トップダウンで、CSR/サステナビリティのプログラムを実施し、企業全体に浸透させています。人権などの社会面を含めたCSR/サステナビリティの取り組みは、欧米企業が世界のリーダーとして牽引している状況があります。
宮地:日本企業は自ら引っ張っていく、主体的に改善するというよりも、法令遵守のようなきまりがあるから従うという意識が強いのでしょうか?
下田屋:CSR/サステナビリティに関することが法令で決められている場合には、従わなければいけないという意識が強く働いていると思います。しかし、まだ企業が取り組むべきCSR/サステナビリティに関して本当の理解が、企業トップ・経営層、そして多くの従業員になされていない段階です。 そのため、他社に先んじてCSR/サステナビリティをビジネスとして取り組むことがなかなかできていないと思います。例えばCSR報告書を出している企業は多いですが、他社が出しているからではなく、出す理由を理解すること、そして本当の意味でのCSR/サステナビリティとは何かを理解することが必要だと思います。
宮地:海外進出をしている、または今後、海外取引を増やしたい企業でCSRに興味はあるがどこから始めたらいいかわからないと思っているところは多いと思います。そういった企業にむけてアドバイスはありますか?
下田屋:一言で伝えるのは難しいですが、企業にとってCSR/サステナビリティが意味するものを理解するところから始めていく必要があると思います。
海外にある現地法人で、CSR/サステナビリティの必要性を感じていれば、まず本社のCSR部門と話をしてみるのがいいかもしれません。本社のCSR部門は、熱心に勉強しているところが多いので、まず相談し、それですべきことが見えなければ、専門家に相談する必要もあるでしょう。
大切なことは、企業活動=CSR/サステナビリティであり、CSR/サステナビリティという概念を抜きに全ての企業活動はできないということです。
宮地:CSR部門がない会社は下田屋さんのような専門家に相談するのがいいですね。
下田屋:企業の大小に限らずCSRを担当する部門がなければリスクもそれだけ高いです。企業が知らないうちにネガティブな影響を環境・社会に与えている可能性も高くなります。 そのような場合は、専門家の力を借りるのが近道だと思います。
また企業全体でCSR/サステナビリティを進めていくにあたって企業のトップ・経営層の理解が不可欠です。 トップ・経営層がCSR/サステナビリティの重要性を理解していなければ、海外進出している、あるいは海外展開を考えている部門がCSR/サステナビリティを支える投資が出来ない状況であるといえます。
宮地:最後の質問となりますが、日本企業のCSRについて、何か一つ変えられたら、何を変えたいですか?
下田屋:1つだけなら、「きちんとした本当の意味でのCSR / サステナビリティの概念を全社員が共通の認識として持つ」ですね。そうするとトップダウンそしてボトムアップの双方で、各人が実施することができるので。
宮地:本当にそうなれば素晴らしいですね。本日はどうもありがとうございました。
まとめ
CSR/サステナビリティの専門家で世界中の日本の企業のCSR/サステナビリティをご支援されているサスティナビジョンの下田屋氏からCSRと日本企業の世界進出についてお話を伺いました。
CSRというコンセプトは、日本国内であれ、海外であれ、企業の社会的責任という意味ではどこにいようが大切なことです。
しかしやはり海外では、消費者の見方や、NGOからのチェックも異なり、CSR自体が消費者の一つのニーズなのかなと感じました。
海外では例えば価格が安いだけはなく、それがどう社会に影響を及ぼしているのか、逆に社会に影響を及ぼさないような企業努力を、メッセージとして企業が発信できれば、消費者のニーズと一致する可能性が海外では非常に高いといえるでしょう。
今回のインタビューが海外進出など、海外と取引がある北関東の企業の皆様のヒントになれば幸いです。
インタビューアー:宮地アンガス
ジャパン・ワールド・リンク代表。栃木県の田舎町育ち。現在英国・ロンドンを拠点として「海外と日本を繋ぐ!」をモットーに、北関東の企業のインバウンド及び海外進出を支援中。
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