インバウンドブログをリニューアル。題して「北関東のインバウンドを10倍にしよう!」!毎週月曜夕方更新でお届けいたします。今回はなぜこのコロナ禍においてインバウンドブログを再開することにしたのか、社長の宮地アンガスとスタッフ山内が対談しました。
民泊はまだ現在進行形!Airbnbの新サービス(Trips)から見えてくる民泊の行き先
2020年までに年間4,000万人、2030年までに年間6,000万人の外国人観光客の受け入れのためには、民泊が必要だと言われています。またテレビのニュースで民泊やAirbnbについて聞くことも増えてきました。同時に、近所迷惑や治安の心配などにより民泊を規制して欲しいと要望する声も大きくなっており、国や自治体レベルでルールを作る動きも活発になっています。
しかし、海外の民泊事情やAirbnbなどの民泊企業を見ていると、日本と欧米では民泊事情が大きく異なっています。
私が一番気になるのは、日本でAirbnbや民泊について語られるとき「これが民泊!」と民泊の形が決まっているかのような取り上げ方をされることです。しかし、実際の民泊トレンドは日進月歩で発展しており、今日も世界中で色々な新しい試みが行われているのです。数年後には、私たちが知らない新しい宿泊の形が主流になっているかもしれません。
つまり、利用する側(ホスト・お客)、規制する側(行政)も海外トレンドに関心を向けていないと、民泊のサービスやニーズについて肝心なポイントを見失う可能性があるのです。
そこで、Airbnbをはじめとする民泊の今後について、海外情報を紹介しながら、今号と次号の2回にわたって考えてみたいと思います。
Airbnbなどの民泊ビジネスはまだまだ進化形 !?
欧米で旅行関連のセミナーに出席しますと「Airbnb」「Sharing Economy (共有型経済)」「Millenials (1980年代から2000年代初頭までに生まれた若者)」という単語は必ずと言っていいほど登場します。ホテルの世界チェーンの役員でさえ、プライベートでAirbnbを利用すると公言しているくらい、Airbnbの利用が一般的になっています。
しかし、人気があるとか一般的であるという一言で片付けられるものではありません。民泊を考える際には、下のように日本と世界の民泊トレンドが大きく異なるという事を知っておく必要があるのです。
Airbnbと日本の民泊の違い
上で紹介しました「Airbnb」と「Sharing Economy (共有型経済)」「Millenials (1980年代から2000年代初頭までに生まれた若者)」という言葉はセットとして海外では切っても切れない関係です。しかし、日本では「Airbnb」と「外国人旅行客」「ホテル不足」という言葉がセットで語られることが多いのです。
この違いは、Airbnbの生まれた背景にあります。
近年欧米では、Millenials世代と言われる若者の旅行趣向に変化が起き、彼らのニーズを満たすためにAirbnbのような新しい民泊スタイルの旅行形態が生まれました。
一方、日本の民泊は、外国人観光客に宿泊先を提供するために、ビジネス(お金儲けの手段)として流行しだしたという全く異なる背景があるのです。
結果、Airbnbに対する見方が、日本と欧米で異なっているのです。
ホテルのAirbnb化
上で述べたように日本と欧米では、Airbnbの広まった背景が異なります。欧米では利用者(Millenials世代の若者文化)に焦点を当てたところからスタートしているので、民泊を宿泊に対するの消費者のニーズの変化として捉えているのです。
ニーズの変化の例としては「ホテルのような部屋に泊まりたい」から「家のような部屋に泊まりたい」という好みの変化が挙げられます。その他、LCCの普及で移動が手軽になったため、FIT(個人旅行者)が増えたり、体験や宿泊に対してこだわる人が増え、お洒落で広くお手頃なAirbnbの家に泊まりたいと思う人が増えているのです。
しかし、海外のホテル業界も黙って見ているわけではありません。
Airbnbを利用する若者のニーズを取り入れた新しいホテルを建てたり、既存のホテルに手を加えたりしているのです。(下のリンク参照)
今後日本でもこのようなホテルが登場する日もそう遠くないかもしれません。
【 Airbnb化しているホテルの例 】
・Ace Hotels: http://www.acehotel.com/london
・Leman Locke: http://lockeliving.com/leman-locke/sleep/
・Marriott チェーンの新しいブランド
Moxy :http://moxy-hotels.marriott.com/
・Radissonチェーンの新しいブランド
Radisson Red:https://www.radissonred.com/
ホテルとAirbnbの協力
日本では報道されていませんが、ホテルとAirbnbのホストが協力し合うという試みも始まっています。
Airbnbに泊まるお客の半分は、もともとホテルを利用するつもりのなかったお客であるということを、先日ある会合で聞きました。家族や友人を訪問するために来た人が、実家や友人宅に泊まるのを遠慮し、代わりにAirbnbを利用しているそうです。
そこで、近隣のホテルがAirbnbのホストが提供できないサービスを補っているのです。
例えば、Airbnbには基本的に朝食のサービスがありません。そこで追加オプションとして、ホテルのレストランで朝食が食べられるサービスを提供しているのです。ホテル側は朝食料金が入るだけでなく、リピーターの場合には次に来た時に自社ホテルに宿泊してくれる可能性が高まる効果も期待できます。
Airbnbの新サービス
日本ではあまり話題になっていませんが、Airbnbが2016年11月から「Airbnb Trips」という新サービスを開始しました。
Airbnb Tripsとは一体?
Airbnbはこれまで宿を取るためだけのプラットフォームでしたが、この他に体験(Experiences)とスポット(Places)が追加され、Airbnb Tripsとなったのです。宿を予約するのと同じ感覚で、現地ツアーの予約ができるようになっているのです。
体験(Experiences)では、一般的な観光ポイントで巡る様なツアーではなく、Airbnbのホストや現地に精通している一般の人が、普通だと体験できないツアーを企画してくれます。
また、スポット(Places)では、現地エキスパートやおもしろい人たちが町のガイドをつくり、秘密の場所を教えてくれるのです。
体験型旅行を求めるFIT(個人旅行客)のニーズに焦点をあてた「旅の体験をまるまる提供できるようにしよう」という狙いを感じます。
Airbnbが目指すもの
Airbnbが宿泊以外の旅行業界に進出するのは「とても自然なこと」であるという見方がある一方、すでに成熟したライバルの多い業界に進出するのは無謀であり、利益にはならないという指摘もある。
Skift社のインタビュー記事によると、Airbnbのホスピタリティー責任者のチップ・コンリー氏は、同社(Airbnb)は旅行関連会社であることを最も重視しているという。3年位前までは、Aribnbは「空間を貸すノウハウ」があるので、宿以外にオフィスの貸し出しもしたらどうか?と聞かれたことがよくあったらしいが、Airbnbは、空間を貸すブランドを目指してきたのではなく、当初から「旅行のスーパーブランド」になることを目指してきたのだという。
Airbnbの今後
「旅行のスーパーブランド」を目指すために、Airbnb Tripsを開始したAirbnbは、今後どう進化していくのでしょうか?
Expedia やBooking.comのようなOTA(オンライン旅行会社)になるのでしょうか?それとも新しい形のOTAを築き上げていくのでしょうか?
Skift社のインタビュー記事によると、Airbnbのブランド力は非常に強く、伝統的な宿泊業をかき乱した経験もあるので、今のOTAを変えてしまう力も潜在的にもっているとのこと。また、Airbnbが目指しているのは、安いチケットを売るだけの事務的なサービス提供ではなく、「感情」を売り、人の行動をも変えるだけの商品・サービスを作ることを目標にしている。アマゾンが海外で本の販売から始まって、私たちの購買行動を変えていったように、Airbnbが私たち消費者の旅行に対する行動や考え方をガラッと変えてしまう可能性も大いにありえる。
Tripsの問題点
忠誠心が高いお客さま(ファン)を世界中にかかえているAirbnbにとって、Airbnb Tripsを成功させる要素は一見十分そうである。しかし、Shiftの記事によると、いくつか障害もあるという。下に3つほど紹介したい。
① 利益を出すために、十分な利用者を集められるか
ロンドンのソフィーさんは、「Drawing, dumplings and drinks」という人気の地元体験をAirbnbで販売している。もし週二回開催しているこの企画をAirbnbで一年通して完売したとしてもAirbnbに入ってくるコミッションは年間100万円程度。これを多いと見るか少ないと見るかは見方によって異なるが、3兆円といわれているAirbnbの時価評価額と比較すると、ソフィーのような体験を販売してくれるくれる人が相当数いないと会社の売り上げの伸びに反映されないという心配がある。
② ニーズの問題
ソフィーのように地元の人がつくった「お洒落な(Coolな)」ツアーが1本売れる度に、普通のツアーが20-30本売れるという。意外とおしゃれな旅行者でも普通のツアーを求めているのである。もし、Airbnbがこの様なニーズに目を向け、売り上げを伸ばすために、いわゆる普通のツアーの参入を増やしてしまったら、Airbnb自身のブランドを傷つけかねないという懸念がある。
③ 交通手段を販売する難しさ
飛行機の格安のチケットの販売は、既存のプレイヤーが存在しているので、そこから顧客を引き付けるのは至難の技である。加えて利益マージンは低い。さらには電車やバスなど、その土地ならではの交通手段の利用に困っている旅行者も多いため、市場として大きいが、地元の取引先企業が多岐にわたりすぎて、販売できるようにするには障害が多すぎるという課題もある。
まとめ
今回、民泊とAirbnbについて取り上げたいと思ったのは、日本で語られている民泊事情は、海外のトレンドの一面に過ぎないと感じるからです。
Airbnbの歴史はたかが8年。私たちが「今」知っている民泊事情はこれから10-20年後に新しい形に変化している可能性がある。これも考慮した上で民泊戦略を立てる必要があるのではないでしょうか。
当ブログでは、日本と海外の民泊事情の違い、Airbnbの流行に対する宿泊業界の取り組み、Airbnbの今後、について紹介させて頂きました。もっと詳しく知りたい方は、こちらのSkiftの記事もぜひ読んでみてください。
次週は、Airbnbが日本で直面している問題について、Tim Romero氏の「Distruptive Japan」ポッドキャストを参考に考えてみたいと思います。
外国人旅行客をもっと増やしたい方、外国人旅行客がもっと喜ぶサービスを提供したい方、ぜひ弊社ジャパン・ワールド・リンクまで、お気軽にご相談ください。
ブログ作成者:宮地アンガス
ジャパン・ワールド・リンク代表。栃木県の田舎町育ち。現在英国・ロンドンを拠点として「世界から北関東へ。北関東から世界へ。」をモットーに、日本・北関東のインバウンド及び海外進出を支援中。
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