北関東のインバウンドが成功するためには、
北関東のインバウンド観光事業者が交流できる
「北関東インバウンドアワード」のようなイベントが必要です。
その理由をご説明する前に、ひとつ質問です!
埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県の北関東4県の共通したインバウンド課題は一体何か、お分かりでしょうか?
北関東でインバウンド観光に携わっている方なら、ご存知だと思いますが、外国人に宿泊してもらえないことです。日帰り客が増えても、宿泊につながらないことが、埼玉県、栃木県、群馬県、茨城県の4県の共通した「深刻な」課題なのです。
上のグラフは観光庁の外国人延べ宿泊者数のデータをグラフ化したものです。平成28年10月一年間(左)と、その翌年、平成29年10月から平成30年9月までの一年間(右)の外国人延べ宿泊者数の全国順位の推移です。
ここ1年の間に、栃木県と茨城県は1つ、埼玉県は3つ、群馬県は4つ順位を落としています。(グラフが右上に上がっていることは、全国順位が下がっていることを意味します)
昨年だけではありません、各県とも過去5年を遡ってみますと、すべての県で、ほぼ毎年順位が落ちています。過去5年間で唯一、前年より順位を上げたことがあるのは群馬県で、昨年と一昨年の2回のみです。栃木県、埼玉県、茨城県の3県にいたっては、最近5年間で一度も前年より順位を上げたことがありません。ほぼ毎年、ほかの県に抜かされ続けているのです!
こちらは、過去5年の間に外国人延べ宿泊者数で北関東の4県を抜かした県のリストです。
佐賀県
青森県
岩手県
愛媛県
香川県
岡山県
新潟県
宮城県
三重県
滋賀県
富山県
宮崎県
奈良県
(合計 13県)
それぞれの外国人延べ宿泊者数を5年前と比較すると、北関東4県の低迷が一目瞭然です。
県名 | 5年前(人) | 直近一年間(人) | 成長率 (+) | |
香川県 | 71,900 | 511,140 | 610.90% | |
佐賀県 | 53,820 | 377,050 | 600.58% | |
青森県 | 55,950 | 360,600 | 544.50% | |
岡山県 | 76,740 | 465,990 | 507.23% | |
岩手県 | 60,580 | 246,420 | 306.77% | |
愛媛県 | 61,350 | 209,510 | 241.50% | |
新潟県 | 103,500 | 348,960 | 237.16% | |
宮城県 | 106,710 | 351,640 | 229.53% | |
滋賀県 | 122,650 | 369,990 | 201.66% | |
群馬県 | 101,210 | 279,340 | 176.00% | |
三重県 | 121,950 | 335,000 | 174.70% | |
茨城県 | 78,770 | 209,050 | 165.39% | |
埼玉県 | 95,080 | 209,020 | 119.84% | |
栃木県 | 169,270 | 291,850 | 72.42% |
栃木県にいたっては、平成30年9月までの5年間の伸び率は「全47都道府県でワースト1位」です!
なぜ、今このような現象が起きているのでしょうか?
「北関東は、魅力がないから」ですか?
「北関東は、東京に近すぎるから」ですか?
どちらの答えも不正解です!
正解は一体なんでしょう?
正解はというと、訪日客が北関東を「周遊したい!」と思わないからなんです。
前のページの表をもう一度見てみてください。同一地域にある複数県が一緒に北関東を追い抜いていることがお分かりになりますでしょうか。地理的にお隣県同士が力を合わせた結果、その地域の外国人延べ宿泊者数が増え、全国順位が上がっていると想像することは難しくありません。
とても重要なことを申し上げますが、私達が「知っていて当たり前」と思っている北関東の観光地は、外国人観光客の頭の中には存在しないか、仮に存在していたとしても独立した「点」としてしか認識されていません。
外国人旅行者から見て、今の北関東の観光地は、東京から日帰りで行ってくる「ついで」の場所です。
「東京に何泊かしているから、そのうち一日くらい東京近郊も見てこようかな… ?」
「富士山は前回日本に来たときに見たし、ちょっとNikko(日光)って世界遺産があるようだけど行ってみる…?」この程度です。
あるいは、「Minakami(みなかみ)でスキーできるらしいけど、簡単に行けそうだったら、ちょっと日帰りで行ってみる…?」という感じなのです。
ここで、北関東4県内のインバウンドの取り組みについて少し考えてみたいと思います。
それぞれ4県は、県内で数多くのインバウンド観光関連の連絡会議を開いております。市町村内や県内で情報交換をしたり、連携方法を考えたり、県内のいくつかの事業者が一緒に海外セールスにで出かけたりしています。県や市町村、観光協会でも県内の魅力を伝えるパンフレットやウェブサイトを制作しています。それぞれの市町村や地域内で事業者のコンセンサスを得たり、地域の方にインバウンドの重要性を知ってもらうことは非常に重要なことです。また、県内で情報交換をしたりお隣の市町村同士と連携を図ることも大切なことです。
しかし、上の表で分かるように、他の地域と比較すると、結果が出ていないのが今の現状です。
各県はさらに、それぞれの県内で完結する周遊ルートや観光提案をつくっています、しかし残念ながら海外目線で見るとインパクトのない中途半端なものが多いのが状況です。内容が国内旅行者向けの提案とほぼ変わらないのです。
4県とも知名度が低い地域なのに、同一県内だけで周遊ルートを作ったり、それぞれの県だけで集客しようと思っても、限界があります。近隣の在日外国人に土日の週末を使ってプチ旅行をしてもらいたいなら、県内の周遊提案はピッタリの内容です。
しかし、本気でインバウンド客を取り込みたいなら、半日という時間、数千キロ以上という距離をかけて、わざわざ日本を楽しみたいとはるばる訪れてくれる外国人旅行者の心を惹き寄せる内容にする必要があります。彼らは、せっかく日本まで来たのだからダイナミックな思い出を作りたいと思っているのです。
彼ら訪日客の判断基準は国内の旅行者よりも数段厳しいです。楽しそうだと思えばお隣の県まで行く代わり、楽しくないかも知れないと迷ったらなかなか訪れてくれません。
本気でインバウンド客がほしいなら、下のような大胆な観光提案が必要です。
1日目:茨城空港から水戸(40km 車で1時間、途中、ひたちなか市に寄ってもよい)
2日目:水戸から奥日光(150km 車で3.25時間。途中、笠間や益子、大谷、奥日光に寄ってもよい)
3日目:奥日光から草津(150km 車で3.25時間。途中、足利、中之条に寄ってもよい)
4日目:草津から秩父(130km 車で3時間。途中、富岡製糸場や下仁田に寄ってもよい)
5日目:秩父から茨城空港(170km 車で4時間。途中、川越、つくばに寄ってもよい)
*あくまでも、ターゲット層やお客様のニーズ(ペルソナ)に合わせてルートを変えたり、新たなの観光地をくわえたりする必要があります。
30年後の地方を支えるインバウンド産業をつくり、外国人観光客にお金お落としてもらいたいなら、これくらいインパクトのある提案が必要です。
これまで上のような周遊ルートや観光連携がないのは、なぜでしょうか?
民間も行政も県境を超えた連携が少なく、県境でお互いの関係がプツリと切れていることがほとんどだからです。私は北関東4県のインバウンド関係者と話す時、「〇〇県(近くの北関東の県)の方とは定期的に打ち合わせをしたり、交流することはありますか?」と聞くと、ほとんどの方は「いいえ、他の県の方と交流したり、情報交換したりする機会はほとんどありませんね…」という答えが返ってきます。
お隣の県同士で、インバウンドのお客様を紹介しあえば、「点」がだんだんと「線」になります。そして、4県がもっと連携すれば、その「線」が「円または面」になり、初めて訪日客に「周遊してみよう!」と思ってもらえるのです。北関東のインバウンドを軌道に乗せるには、北関東4県同士でもっと交流を深め、お互いに連携をすることが必要なのです。
FIT客(個人旅行者)だけではありません。団体旅行も同じです。
少し前、このような話を聞きました。
ある海外の旅行会社のツアーの一部に茨城方面から足利を経由して草津温泉に泊まるコースが組まれていました。お客さんは足利で観光をし、草津温泉に泊まっていたのですが、旅行会社が宿泊先を草津温泉から軽井沢(長野県)に変更してから、そのツアーは北関東自動車道で足利を素通りするようになってしまった…というのです。
栃木県は足利、群馬県は草津をそれぞれ別々の点で売り込んでいたため、旅行会社としては、それぞれの観光地をはずす判断に、抵抗がなかったのだと思います。結果両方とも翌年のコースから外れてしまったのです。もし足利と草津が県境を超えた線(または円)として、両方を訪れる意味やストーリーをアピールできていたなら、旅行会社としては、代替案に乗り換えるより、既存のルートを使い続けるメリットを感じたかもしれません。
上はあくまでも一例ですが、前述した北関東周遊だったり、足利と草津が組んだり、水戸と日光が組んだり、富岡と川越が組んだりすれば、これまで日帰り客だった海外の外国人旅行者が、1泊、2泊する可能性が高くなります。
ところが、そのためには民間や行政の関係者が県境を超え、定期的に交流する機会が必要なのです。
北関東インバウンドアワードは、一年に一度ではありますが、「栃木県、埼玉県、群馬県、茨城県に加え、北関東に興味のある東京の観光事業者が交流できる」他にない非常に貴重な場なのです。
北関東4県にまたがった広域周遊の提案や広域連携が図れれば、北関東の各観光地のインパクトも高まるはずです。
弊社が2017年に行ったインバウンド調査によりますと、北関東で最も知名度が高かった世界遺産のNikko(日光)でさえ、アメリカ人の8.7%しか聞いたことがないと答えています。
私は2002年から2016年までイギリスに約15年間住んでいました。今でも一年に3回程行っておりますが、そこで見る日本を紹介する観光マップの多くは、北関東の観光地が登場しません。半分の確率(あるいはそれより少ない確率)でやっとNikko(日光)が登場します。海外の観光マップにNikko以外の北関東の観光地が紹介されていることは稀です。
下の写真は、2018年夏、ロンドンでの日本政府観光局(JNTO)の展示ブースで私が撮った写真です。
お気づきでしょうか。
北関東4県はひとつも観光地の紹介がありません…
それでは、次の写真どうでしょう?
こちらは、日本旅行を専門にしている有名な旅行会社のパンフレットの観光紹介ページです。
Nikko(日光)がありますね。でも喜ぶのは早いです。
全国、32ヶ所も紹介しているのに、栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県の北関東4県は、「Nikkoしかない!」のです。
このように、北関東の観光地の魅力は、全く伝わっていないか、もし伝わったとしても、「ひとつの点」だけです。
県境を飛び越えて観光関係者同士がもっと交流をしたり、意見交換をしないと、広域連携は図れず、いつまで経っても訪日客が「周遊したい!」と思える北関東の旅行提案や広域連携は生まれません。他県との交流をしなければ、北関東の観光地は、ひとつの点のまま変わらないのです。
北関東インバウンドアワードという場で縁ができた皆様が、県境を超えた連携をスタートすれば、点は次第に線になり、線が円や面になります。そうすると観光PRに「厚み」がでるため、これまで海外の観光マップ等で紹介されていなかった北関東の観光地が次第に世界に紹介されるようになっていくはずだと思っております。
このように「北関東インバウンドアワード」は、今後の北関東4県のインバウンドの発展にとって、欠かせない企画だと考えております。
余談ですが、北関東インバウンドアワードを民間の方にご説明すると、多くの方が「本当は行政がこういうことをやるべきだよね。」ということをおっしゃいます。
行政の方とお話する機会も多いので分かるのですが、今の時点で、北関東の行政が北関東インバウンドアワードのように4県の観光事業者を交流させる企画を行うことは、残念ながら困難です。それでは仕方ないな…と諦めてしまえば、北関東のインバウンドはいつまでも発展しません。そこで、スタッフと一緒に「北関東のインバウンドの発展のために、自分たちが出来ることをしよう!」と思い、立ち上げたのが「北関東インバウンドアワード」です。
アワードですので、優れた観光事業者を表彰するのがひとつの目的です。しかし北関東というくくりで実施をしてるのは、北関東のインバウンド関係者同士が県境を超えて交流できる場を提供し、様々な連携を後押ししていけたらという、重要な目的もあるからです。
運営費を確保するためにアワードに応募した団体から応募費をとったらどうか?という意見も聞きます。しかし私達は、北関東インバウンドアワードを、一団体でも多く、一人でも多く参加できるイベントにしたいという強い気持ちがありますので、応募料を無料にしている上、審査後、簡単な審査レポートをつけさせていただいております。。今後、賛同して頂ける企業や仲間を増やし、北関東と関連が深い観光関係者同士が連携していける公共性の高いイベントにしたいと考えております。
最後になりますが、皆様から頂いております、第一部の講演会や第二部の授賞式・懇親会の参加費は、当日お借りする会場代、ご提供する飲食代、およびした講師の謝礼、各県などの招待客のコストに使わせていただいております。
この他にも、募集の呼びかけ、プレス対応、参加の呼びかけ、印刷代、郵送代、準備や賞状、トロフィー、審査員等に多くのコストがかかっております。このコストは、スポンサーの皆様に協賛をしていただいております。
北関東インバウンドアワードは、協賛企業がなければ、開催することができませんので、スポンサーは当イベントの非常に重要なパートナーです。
今後は、新部門を増設したり、特別講演会やセミナーを企画したり、インバウンドに必要なノウハウを教える分科会を作ったり、開催を毎年異なる都市で開催したり、北関東のインバウンドを活性化するためのビジョンがございますが、予算もそれに合わせて拡大するため、より多くの皆様のご協力が必要になっていきます。北関東インバウンドアワードの取り組みにご賛同頂ける場合には、ぜひご協賛をご検討いただけたら幸いです。ご協賛企業の皆様は、当イベントでも出来る限りPRをさせていただきます。
今後、「北関東インバウンドアワード」が北関東への訪日客の集客に役立つよう、事務局一同努めて参りますので、引き続きご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
北関東インバウンドアワード事務局
ジャパン・ワールド・リンク株式会社
宮地アンガス
* 協賛金の提供は困難だがボランティアとして受付やカメラマンなどとしてご協力頂ける方も、大歓迎でございます。
2016年に北関東のインバウンドに危機を感じ「北関東のインバウンドの現状と可能性 – 外国人延べ宿泊者数の分析で分かったこと 」というブログ記事を書きましたが、そのときに比べ、状況はさらに悪化しています。
ご興味がありましたら、こちらも御覧ください。