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北関東のインバウンド現状と可能性

北関東のインバウンドの現状と可能性 – 外国人延べ宿泊者数の分析で分かったこと

2017年のインバウンド消費額は、4.4兆円(2016年比+19% )が見込まれています(みずほ総合研究所)が、これはいったいなにを意味しているのでしょうか。

一つには、稼ぐ「手段」としてのインバウンド観光が注視されている証左でもあります。

宿泊客の方が日帰り客よりも5-10倍の経済効果があると試算されているように、宿泊業を中心に地域経済の活性化を考える場合、いかにして「宿泊客」を増やすかが重要になります。

 

そこで今回は、観光庁の発表している外国人延べ宿泊者数のデータをもとに「北関東のインバウンドの現状と可能性」について分析してみました。

外国人延べ宿泊者数の推移(全国)

下のグラフは、観光庁が公表している全国の外国人述べ宿泊数をまとめたものです(「宿泊旅行統計調査」)

データをみると、東日本大震災後も宿泊数が毎年右肩上がりで伸びていることがわかります。

また、直近1年(2015年12月-2016年11月)では、7,000万泊を超えています。

*2016年12月のデータはまだ公表されていないため、ここでの「直近1年」は2015年12月-2016年11月の12ヶ月の合計を指しています。

北関東 (栃木、群馬、茨城、埼玉)の外国人延べ宿泊者数

つぎに、北関東(栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県)の外国人延べ「宿泊者」数を見てみましょう。

先に紹介した全国の述べ宿泊数の場合と同じ手法を用いて、各県の外国人延べ宿泊者数をまとめたものが下の棒グラフです。

多少のばらつきはあるものの、北関東の各県とも年々増加の傾向が見られ、とくに2014年‐2015年にかけてはその増加率が飛躍的に大きくなっています。

*2016年12月のデータがまだ公表されていないため、直近1年は2015年12月-2016年11月の12ヶ月の合計を指しています。

栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県の『インバウンド競争力』

では、他の県と比較した「北関東のインバウンド競争力」はどうでしょうか。

北関東の各県(栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県)の外国人延べ宿泊者数の全国順位と、全国の外国人延べ宿泊者数に対するシェア(%)とを見比べることで、北関東のインバウンド競争力を考えてみます。

2018年9月までのデータを使い、新たに北関東4県のインバウンドを分析した結果をこちらのページ「北関東のインバウンドに、北関東インバウンドアワードが必要な理由」で紹介しておりますので、合わせてご覧くださいませ。

1. 外国人延べ宿泊者数の全国順位

観光庁が発表している外国人延べ宿泊者数の直近1年分を集計すると、栃木県30位・茨城県31位・群馬県32位・埼玉県35位とその順位は決して高くありません。

この順位がどのように推移しているのか気になりませんか。

2007年以降――すなわち過去10年間の栃木県・茨城県・群馬県・埼玉県の各県の外国人延べ宿泊者数の全国順位を観光庁のデータから割り出し、47(都道府県の数)で割った数値の推移を表してみました。

数値は、外国人延べ宿泊者数の全国順位が高ければ大きくなりますし(全国1位の場合の最大値は47.0)、逆に全国順位が低ければ小さくなります(全国47位の場合の最小値は1.0)。

したがって、全国47都道府県の中間値は2.0となります。

全国順位に改善が見られれば右肩上がり(「インバウンド競争力が強くなっている」)となりますし、反対に順位が落ちれば右肩下がり(「インバウンド競争力が弱くなっている」)となります

下の図を見ますと、乱高下しながらも、過去10年間は、ほぼ変化のない状態か、もしくは、少し下がっていることがわかります。

その意味で、一義的には、北関東各県のインバウンド競争力は強くなっていないと結論づけることができるでしょう。

*2016年は、12月のデータがまだ公表されていないため、2016年1月-2016年11月の11ヶ月の順位を用いています。

2. 全国の外国人延べ宿泊者数に対するシェア(%)

全国の外国人延べ宿泊者数に対するシェアを確認することも重要な指標になります。

同じく観光庁のデータを用いて、栃木県・茨城県・群馬県・埼玉県の外国人延べ宿泊者数を全国の外国人延べ宿泊者数で割り出し、外国人延べ宿泊者数の全国シェアをパーセント(%)で表しました。

現在の北関東各県の外国人延べ宿泊者のシェアは、0.3%前後となっていますから、茨城県と群馬県は過去10年間ほぼ変わっていませんし、栃木県と埼玉県ではシェアを落としていることがわかります。

上の全国順位の推移のグラフと同様に、北関東各県のインバウンド競争力は強くなっていないと考えられます。

*2016年は、12月のデータがまだ公表されていないため、2016年1月-2016年11月の11ヶ月の順位を使用しています。

栃木、群馬、茨城、埼玉の『インバウンドの可能性』

ここでは、他の県の外国人延べ宿泊者数と比較することで「北関東のインバウンドの潜在的な可能性」を考えてみます。

はじめに、①ゴールデンルート(東京から富士山を通り京都・大阪に抜けるルート)上になく、②福岡、広島、神戸、札幌といった国際都市がない都道府県を条件に、インバウンドに成功している県を4つほど選択し、栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県の外国人延べ宿泊者数と比較してみました。

下のグラフからもわかるように、いずれの県も海外からのアクセスが良いとはいえませんが、訪日外国人の誘客に成功しています。

数値で比較すると、栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県に比べて5-7倍ほどになっていることがわかります。

このような結果からわかるように、マーケティングを上手く利用すれば、栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県においてもインバウンド(訪日誘客)には未知の可能性があると考えられます。

その一方で「栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県は東京からのアクセスが良いので、コンテンツに力を入れても観光客が泊まらずに帰ってしまうのではないか」という議論もあります。

そこで最後に、観光庁のデータを用いて、東京からアクセスの良い千葉県と神奈川県の外国人延べ宿泊者数と栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県のそれとを比べてみました。

下のグラフをみれば一目瞭然です。

たとえ東京の近くであっても、インバウンド観光誘致がマイナスに働くことはありません。

逆に、東京からのアクセスが良い栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県は、インバウンド(訪日誘客)にはまだまだ大きな可能性を秘めています

考察(まとめ)

本日のブログでは、前半では栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県の「インバウンド(外国人延べ宿泊数)の現状」について、後半ではこれら北関東4県の「インバウンドの潜在的な可能性」について考えてみました。

各県とも外国人延べ宿泊数を伸ばしているものの、全国的に比較すると、残念ながら遅れをとっているといわざるをえません。

①空港がない、②国際便が少ない、③クルーズ船が来ない、④東京から近すぎる、というのをその理由としてあげる方もいますが、今回のブログで紹介しましたように、北関東と似ている状況でもインバウンドに成功している県はあります。

では、栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県がインバウンドの可能性を発揮することで外国人延べ宿泊数を増やし、地域活性化の一助になるためにはどうすればよいでしょうか。

ご賢察のように、これからの訪日観光は、FIT(個人旅行者)が中心になります。

つまり、北関東のようにインバウンド誘致に出遅れている地域にとっては、他の県よりも先に前衛的な誘客事業に取り組める起死回生のチャンスがあるということです。

FIT(個人旅行者)の誘客には「地域のオンラインのプレゼンス」「他の地域との差別化」が重要になりますが、現時点で双方に上手く取り組むことができている都道府県はほとんどみあたりません。

FIT客の誘致を成功させるためには、北関東の県・各市町村・観光協会・インバウンド事業者などが、①それぞれの戦略に基づき、②海外に向けたマーケティング活動(とくにオンライン上のマーケティング)にもっとお金・人・時間を投資していくことが肝要です。

今回のブログを書きながらも、北関東(栃木県・群馬県・茨城県・埼玉県)には、まだまだ掘り出せるコンテンツが眠っていると気づきましたし、官と民が力を合わせて海外向けマーケティングに注力すれば、大げさではなく、現在の10倍くらいの大きな数字も達成可能ではないかと感じました。

FIT旅行者がインターネット上で日本の滞在先の候補を調べるとき、北関東を選択してもらうことができるか、そして、どうしたら北関東に魅力を感じてもらうことができるのか、また、そのためには北関東のインバウンド事業者として何をすべきなのか、ますます真摯に考えていかなければなりません。

弊社では、今後もブログを通してそのヒントをご紹介して参ります。

最後になりますが、インバウンド観光や外国人宿泊客の誘致に関連するお悩み・ご相談ごとがございましたら、ぜひ弊社ジャパン・ワールド・リンクまで、お気軽にご相談ください。

ジャパン・ワールド・リンクのブログ プロフィール画像 宮地アンガス

ブログ作成者:宮地アンガス

ジャパン・ワールド・リンク代表。栃木県の田舎町育ち。現在英国・ロンドンを拠点として「世界から北関東へ。北関東から世界へ。」をモットーに、日本・北関東のインバウンド及び海外進出を支援中。

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